外国語習得法講座 その4
文法の必要性
2. 文法が外国語習得の近道
子供は母国語を文法を学ばずに話せるようになりますが、大人がもし子供と同じやり方で外国語を習得しようとしたら、その人は、子供が母国語を学ぶためにかかった同じ時間分だけその外国語の習得にあてなくてはいけません。この「子供と大人の言葉の習得方法の違い」をカトー・ロンブはこう述べています。
「ふつうよく、大人は外国語を身につけるにあたって、自分が幼児期に母国語を身につけたと同じ方法でやらねばならぬと言われています。
こんな説を、わたしはまちがっていると思います。大人を子供の世界認識の状態に持って行くことは、大人にハイハイ着を着せたり、幼児用の歩行練習用の囲いに入れたりすることができないのと同様、不可能なことなのです。
幼児の特徴のひとつは、彼が未だ一つの言語も身に付けていないという白紙状態にあることなのです。(中略)
また、幼児が初めてものをしゃべり出すとき、モノとその名称を彼は同時に認識するものなのです、彼の中に内面世界が形造られるのは、ゆっくりと、それも徐々にです。彼がしゃべれるようになるのは、生きようとする本能がそのことを強いるからです(これが最大の動機!)。
大人はすでに豊かな知性と完成の世界を築き上げています。彼の中には、思想や感受の様式だけでなく、第二信号係、すなわち意思疎通(コミュニケーション)、また思想や感情の表現の手段としての言語が形成されているのです、そして新しい言語に取りかかるとき、彼はすでに時分の中に形成されている一大体系を改築しなくてはならなくなるのです。」(ロンブ1981,P.62)
英会話教材の宣伝などでよく、「文法を学習しなくてもテープを聞いていれば英語が話せるようになる!」とかいったものが多く存在します。確かに耳から外国語を学習する方法は、私も大変効果的だと実感していますが、それは文法も同時に学ぶから効果があることなのです。もし全く文法を学ばずに、赤ちゃんが言葉を学ぶようにやるとしたら、その人は何年間も何年間も赤ん坊のように、一日中その意味の分からない外国語を聞き続ける環境に自分を置かなくてはいけません。そしてそれは、殆どの人にとって物理的に、経済的に無理なことなのです。
だから既に大人である我々は、赤ん坊には出来ない学習方法を率先してやるべきなのです。それが「最初に文法をしっかり習得すること」です。
それが最も外国語を早く習得する近道なのです。論理的思考能力が高い大人は、文法を最初に覚えた方が、大変効率よく短期間で語学を習得できるのです。最初に文法の土台をしっかり築き上げておけば、その後のどんなシチュエーションでも応用を利かせることができるようになります。文法は、次の「私の経験」でも述べますが、後々「読み書き」のみならず、「聞く話す」能力をも大いに助けてくれる素晴らしい存在なのです。
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