外国語習得法講座 その3
学習は短期集中
1. 語学の天才、シュリーマンの勉強法のヒント
さて、その2で「外国語は難しくない」というイメージを持てたところで、今度は「その勉強スタイル」が問題になってきます。一体どういった勉強スタイルが、語学習得に最も適しているのでしょうか?
私は、断然「短期集中型」学習が最も効果的だと考えています。なぜなら、自分が外国語を学習してきた過程の中で、短期集中で勉強した時の方が大幅に自分の能力が伸びたからです。そこでこの章では、外国語学習における「短期集中型」学習について考えていきたいと思います。
ここではまず最初に、トロヤの遺跡を発見したことで有名なシュリーマンの話を例に挙げてみたいと思います。シュリーマンは、語学の達人として最も有名な人物です。彼の語学に対する執着心は大変強く、実際彼は、一生の中で15ヶ国語をも完全にマスターしたとされています。しかも彼はどの言語でも、読めるだけではなく、自由自在に書いたり話したりすることができたというのです。彼の語学学習法とは、
「非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日一時間をあてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦すること」シュリーマン(1991,p.25)
という、画期的でも何でもない非常にシンプルなものでした。しかし、彼の外国語習得に向ける情熱と記憶力は他の人とは比べ物にならず、そして彼の学習方法はまさしく「短期集中型」だったのです。彼の自伝「古代への情熱」の中で、英語を学習した時のことを彼はこう述べています。
「できるだけ早く会話をものにするために、日曜日には英国教会の礼拝にいつも二回はかよって、説教を傾聴し、その一語一語を低く口まねした。どのような使い走りにも、雨が降ってももちろん、一冊の本を手にもって、それから何かを暗記した。何も読まずに郵便局で待っていたことはなかった。こうして私はしだいに記憶力を強めて、三ヶ月後にははやくもわが教師テイラー氏とトンプソン氏の前で、いつもその授業時間には印刷された英語の散文二〇ページを、あらかじめ三回注意して通読していたならば、文字どおりに暗誦することができた。この方法によって私はゴールドスミスの『ウェイクフィールドの牧師』の全部とウォルター・スコットの『アイヴァンホー』とを暗記した。過度の興奮のために私はごくわずかしか眠れないので、夜中にさめている全ての時間を利用して、夕方に読んだことをもう一度そらでくり返した。記憶力は昼間より夜ははるかに集中するものであるから、私はこの夜中にくり返すことは最も効果があることをしった。私はこのような方法をなんぴとにも推薦する。このようにして私は半か年の間に英語の基礎的知識を我がものとすることができた。
つぎに私は同じ方法をフランス語の勉強にも適用して、つぎの六ヶ月でそれに熟達した。フランス作品のうちで私はフェヌロンの『テレマコスの冒険』とベルナルダン・ドゥ・サン・ピエールの『ボールとヴィルジニー』とを暗記した。この不休の猛勉強によって一年間に私の記憶力は強くなり、オランダ語、スペイン語、イタリア語、およびポルトガル語の修得が非常に容易になった。これらの言葉のいずれをもりゅうちょうに話しまた書くことができるためには、私は六週間以上を必要としなかった。」(シュリーマン1991,p.26)
先に述べた通り、彼の学習方法は本当にシンプルなもので、魔法の学習法でも何でもありません。彼の天才的記憶力はさておき、ここで重要なのは、彼が
短期間で集中して言語を習得した
ということです。そこで次は、他にいくつかシュリーマン以外の語学の達人の学習法を見ていきながら、「短期集中型学習」について考えていきたいと思います。
その3「2. 外国語の達人は、どこかで短期間に集中して勉強している」へ
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