外国語習得法講座 その6
アウトプット―言語は実践を必要とする
1. インプットの次はアウトプット
前章でアウトプットよりインプットが重要だということを述べました。しかし、それは決してアウトプットは軽視していいということではありません。早稲田大学教授の東後勝明は、言語は「使う」ことが大切だと以下のように述べていています。
「 私はこんなふうに考える。コニュニケーションの手段として英語を身につけるためには、「聞き」「覚え」「使う」の三つにすべてが凝縮される。(中略)
三つ目は「使う」こと。覚えた英語を実際にコミューケーションの手段として使ってみること。従来は覚えてから使うという考え方を私も持っていたが、それでは泳げるようになってから水の中に入ることになり、間に合わないことが最近わかってきた。そこでその考え方を一歩進め、覚えながら使う、また使いながら覚えるということにすればいい。「覚える」ことと「使う」ことは表裏一体なのである。」(現代新書編集部1992,pp.62~4)
私も彼の意見には賛成で、言語は「使いながら覚えるもの」だと考えています。いくら「多読・多聴」をして大量のインプットを自分の中に行ったからといって、そのインプットしたものが全て完全に使えるわけではありません。四章で、カトー・ロンブの「乳児は模倣力の形成には、能動的発話はまったく不要だ」という意見を引用しましたが、乳児は決してある時期からいきなり正確な言語を喋り始めるわけではありません。何度も何度もあらゆる言葉を試しながら喋ってみて、間違いを回りの大人に直されながら正しい言語を獲得していくのです。このことは、外国語習得の過程においても同じことが言えます。全くアウトプットの練習をせずに最初から正確な言語が使えるはずがありません。ましてや、いきなり本番でその言語をスラスラと書いたり、ペラペラと話したりできるはずがないのです。
アウトプットとはつまり、言語の「実践」です。言語は、その実践を重ねることによって、より確かなもの、つまり完成型に近づいていくのです。残念ながら、大量のインプットだけをしていてもその言語を確実に使えるようにはならないのです。
アウトプットの一つ「文章を書く能力」は、練習問題集で勉強する以外に、その勉強中の言語で毎日日記を書いたり、海外にメールフレンドを作ったりして、自分から外国語を書く機会を作らない限り、他に練習する方法がないと思います。このライティングの能力も、今までいくらその人が自分の中にその言語をインプットしたかによって変わってきます。何度も言うように、人間は自分の中に無いものは書いたり喋ったりできないのです。
ライティングの練習には、私は断然「メールフレンド」を作ることをお勧めします。世の中には、日本語を勉強したり、日本のことを知りたがっている人が驚くほど多いのです。ならば彼らを利用しない手はありません。インターネットのサイトなどを利用して、E−mailなどで海外のメールフレンドとメール交換をするようになると、文章を書くスピードが驚くほど速くなってきます。しかも、教科書には決して載っていないスラングなどに出会える可能性が高いのです。自分が相手に言いたいことがあれば、そのことを表わす単語や動詞を調べようと思うし、ボキャブラリーを増やすのにも大変効果的です。
では次に「話す能力」ですが、それには「外国語で独りごとを言うこと」が最も効果的だと思います。これに関しては次にまとめて書きたいと思います。
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