外国語習得法講座 その6
アウトプット―言語は実践を必要とする
3. アウトプットを続けることによるメリット
外国語で独りごとを言い続けるなど、外国語の「アウトプット」をし続ければ、次第に、たとえ的確な単語を知らなくても、他の単語や言い方で「間に合わせる」やり方を身につけられるようになってくるということを私は自分の経験から学びました。横浜市立大学商学部教授のセルゲイ・ブラギンスキーも、外国語を使う時は、自分が知っている知識をいかに上手く使うかが重要だということを以下のように述べています。
「そのとき、私は語学の学習について一つの非常に重要なことを発見したという気がした。
つまり、語学は経済と同じで、限られた資源の有効的利用が鍵である。と。ネイティブ・スピーカーよりも自分のほうが常に語彙等の言葉の資源が少ない。それらを増やすことも大事だが、それだけに集中して活用に力を入れないと、過剰な設備投資をしている企業と同じである。遊休施設を持ってはならない。持っているものを完璧に活かせるようになってからもっとむずかしい文法とより広い語彙を順次マスターすればよい。数百語ぐらいの語彙と簡単な文法さえあればほとんど自分の意志を何でも相手に伝えられる。鍵は使いこなしだ。」(現代新書編集部1992,p.231)
彼の言う「限られた資源の有効的利用」は、外国語習得にとって大変重要なことです。私は、自分がアメリカに留学する際、私の一年前に留学した先輩が言ったことが未だに頭に残っています。
「留学で学んだことは、新しいボキャブラリーじゃなくて、いかに自分が知っている言葉を使い回すか、そのノウハウだ」
実際その先輩の言葉は正しく、私が1年間アメリカに言って学んだことは、
「言いたいことを言うために、いかに自分が知っている単語をうまく使い回すか」
でした。実際そのアメリカでの一年間で、私のボキャブラリーはあまり増えませんでしたが、帰国直前にもなると、自分の言いたいことを言うのにそんなに苦労した記憶がありません。これは、私が「限られた資源の有効的利用」が上手くなったことを意味するのでしょう。
このように、アウトプットの練習をたくさんし続ければ、どんどんその外国語をスムーズに使える方法を身につけられるようになってくるのです。ライティングにしても、正確な単語を使って綺麗な文章が書けるに越したことはありませんが、友達とのEメールなどでは自分の知っている知識(文法・単語など)をフルに活用できるようになれば、驚くほどに早くスムーズに文章を書けるようになり、あまり困ることはなくなるのです。
外国語習得において、たくさんアウトプットの練習をすることによって、間違いの少ない外国語を自然に使えるようになることが重要です。それがつまり、「文法の内在化」を確実なものにすることを助け、最終的には「言語の内在化」につながるのです。
大量の「インプット」に加え、その学習中の外国語をたくさん使うこと、つまり、たくさんの「アウトプット」をすることによって、自分の頭の中に、その外国語への太い「回路」ができ、次第にその外国語を使うことが、
「特別なこと」ではなく「自然なこと」になってくるのです。
インプットとアウトプットをバランスよく組み合わせ、諦めることなく外国語の習得に努力していれば、誰もが最終的には「言語の内在化」を達成することは間違いないでしょう。そしてその「言語の内在化」を達成した時は既に、その人はその外国語を習得したと言えるのです。
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