熱心に自分の車について説明を続けているシリムスの肩に、リリネットはそっと手を置き、言います。
「ねぇシリムス、あなたがどのくらいカサランドラについて知っているかは分からないけれど、昨日私が見せた、謎の赤い物体を調べてみたいと思わない?

こんなに機械いじりが好きなあなたですもの、内心昨日じっくりと触って色々調べてみたかったんじゃないの?」
リリネットはこういうところだけやたら計算高い少女です。ロ・ジャンは、彼女の言葉巧みな様子に関心してしまいました。
シリムスはそのまま微動出せず考え込んでいます。確かに、リリネットが言った通りなのです。昨日は執事という立場を崩せず、リリネットの前では熱心にあの自転車のようなものを調べることができなかったのです。機械の大好きなシリムスでさえ、昨日の自転車のようなものは初めて見ましたし、それにあの謎の物体に使われている金属は、彼でさえ今まで一度も見たことがなかったものなのです。実は 、彼は明日リリネットからあの物体を取り上げるつもりでしたが、取り上げたところで、ただの執事である自分がその物体を調べる機会がないことは分かっていました。でも、今リリネットに協力すれば、それが可能になる…?
シリムスが、長い沈黙を破って口を開けました。
「リリネット様、わしがここで働いていることを黙っていて下さるなら、それをわしにやらせてもらえんだろうか?」
「あら、シリムス、それはあなたの弱みであって、今一緒に私にお願いすることじゃないんじゃない?でもま、いいわ。あなたには色々活躍してもらいたいことがあるし、これで契約成立ね」

inserted by FC2 system