次の日、リリネットはシリムスを自分の部屋に呼びました。シリムスは部屋に着くとすぐ、謎の赤い物体の方へ駆け寄り、さっそく物体を楽しそうにいじっています。

「なるほどこれは大変軽い!見た目とは大違いですじゃ」
「そうでしょ?これが、少なくともロシエリナのものではないことはお分かりでしょ?シリムス、この自転車のような物体をあなたに1週間預けるから、その間にこれが本当は何なのか、あなたの機械の知識で調べてほしいの」
「分かりました、リリネットお嬢様。私シリムスにお任せください。必ずや、リリネット様が満足いくような結果をお届けいたします」
リリネットは一息ついて、シリムスに念を押します。
「シリムス、分かっていると思うけれど、これは私たちだけの秘密だからね。他の人にばらしたら、あなたのこともばらすからそのつもりでいてね」
シリムスは顔が一瞬凍って、ひどく焦っています。
「…わ、分かっております。絶対誰にも言いませんので、どうか、あの製作所に私が通っていることだけは…。我が一族、代々こちらの執事させております。私がクビになってしまったら、先代の方々に顔見せができませぬ。私が退いた後は、息子にこの執事の仕事を引き継ぎたいと思っておりますし…」
「わかった、わかったわ、シリムス。全てはあなたの口の堅さにかかっているわよ。ねぇシリムス、あなたカサランドラのことを私よりずっと多く知っているわね?隠してもムダだから、あなたの知っていることを教えてちょうだい。この物体は恐らくそこらから落ちてきたんじゃないの?」

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