3日目。(2月9日) 前日TGVから降りたパールデュー駅のすぐそばに、結構大きなリヨンのモール(3階建て・一部4階建て)が ある。昔住んでた私の寮からは、歩くなら30分ぐらいかかるぐらい遠いモールだったが、友達の寮からは、たったの10分。かなり便利だ。 フランスの縦列駐車はかなりやばい。写真を見ていただければお分かりだと思うが、道路の脇には、このように、車が隙間なく縦列駐車をしている。どこの道路もそうだ。中には、お互いの幅が30cmをきるほどの近距離縦列駐車などがあり、この神経は一体と、いつも不思議に思う。昔知人のフランス人に聞いた話だが、フランス人は、自分の車を止めるのに十分なスペースがなかったとして、車を前後に「ガンガン!」とぶつけて前後の車を動かして自分の車を止めるそうである。出るときもしかり。その神経、あり得ない。 久しぶりのパールデューのモール。全然変わってないのが、本当に懐かしさを誘う。最初に、クラフト関係の店にひょこっと入ってみる。昔も入ったことのあった店だが、水彩画の画材がフランスではどのように売られているのか興味があったのだ。しかし、大して水彩画用具は揃っていなかった。絵の具も世界堂ほど揃ってないし、ヨーロッパ産の水彩画用具も、ひょっとして日本が一番手ごろに入手できる商品なのかなぁ、とちょっとだけショックを受けた。 そのモールはとても大きいので、ある一角に子供用メリーゴーランドがある。メリーゴーランドの乗り物の一匹がピカチュウだった。すかさず写真を撮る。殆どの日本のアニメは、フランスのテレビから追い出されてしまったが、比較的暴力的な映像の少ないピカチュウは、フランスのテレビでも放映されていてとても人気だ。ぴーかーちゅう。 フランスのCDと本は、もっぱら大型チェーン店FNAC(フナック)で購入すべきだろう、というか、そこ以外のお店は、殆ど品揃えがよくない。FNACは、リヨンには2軒あるし、パリにもあるし、ニースだって、マルセイユだって、フランス国内どこだってある。一体どういう会社なのか分からないが、バルセロナでも発見したことがあった。ヨーロッパ全体に展開している会社なのかしら? 今回の旅で絶対買わなければいけなかったものは、私のフランスのお気に入りバンド「KYO(キヨ)」のCDと、フランスポップのベストソング集である。KYOは最近2ndアルバムを出したばかりだったので、1stと合わせて2枚両方買った。 フランスはトイレがない!こればっかりは何度も不満を言わせていただきたい。そのモールは本当に大きい建物だけれど、トイレは2ヶ所にしかない。しかも有料である!一体なんなんだ!私はその制度に本当に苛立ちを感じる。トイレは生理的な現象であるから、お金を取る対象には絶対してはいけないと思う。 友達はもう寮に帰ってきてた頃だし、トイレに行きたかったし、お金もなかったからもう帰ろうかと思ったのだけれど、どうせバックにスケッチブックを入れていたので、モールの中をスケッチすることにした。モールの中には結構広場っぽいところがあって、みんな座ってゆったりしている。大抵のフランス人は、その広いスペースでお昼のサンドウィっチをほうばる。 お絵描きというのは、意外と注目されるものであって、私は正直その注目される感覚が好きである。たとえ私が大した絵を描けてなかったとしても、人は何を描いているのか興味深く覗きたくなるのだ。私は絵を描いている間無心を装っていたが、実際、後ろで絵について話している人が何人もいた。実際に絵を見ていたのか、絵を描いてるわ、ぐらいの話だったのか、そこまでは分からないが、それでも何となく嬉しかった。 フランスには中東系の移民がたくさんいるが、モール内には、暇をもてあましてぶらぶらしている彼らがたくさんいる。絵を描いている私に接触するぐらい近くに、暇そうな中東系の男の子のグループが座った。私の隣の男の子(10歳前後)に話しかけられた。 "Vous dessinez Part-Dieu, Madame?" 直訳すれば「あなたはパールデュー(モールのこと)を描いているのですか?」である。マダムというのは、別に私が既婚に見えたわけではない。こんな男の子でも、フランス語では普通、知らない女性の方は全員マダムと呼ぶものなのだ。過去に短期で留学していたとはいえ、やはりフランス語の会話は緊張する。男の子との話の中で半分ぐらいは、なんだか分かったような分からなかったような感じだった。私の描いている風景は噴水がよく見える場所だったのだが、噴水を描くとうざいので描いてなかった。男の子に噴水は描かないのか?と聞かれて、描かないわ、と答えたら、難しすぎるからか?と聞かれたので、噴水を描くと絵がきたなくなるから、と答えたかったものの、言い方がうまく出てこなかったので、ただ「そう」とだけ答えた。 大分時間が経ってしまった。友達の寮に帰ろうと思った。トイレにすごく行きたかった。しかし、帰る前に一つしておくべきことがあった。ロシア空港アエロフロートパリ事務局に、帰りの飛行機の「リコンフォーム」しなければならなかったのだ。 実は前日も何度もアエロフロートに電話をかけてリコンフォームをしようと試みていたのだが、全くつながらなかったのだ。日曜だったとはいえ、航空会社の電話がつながらないとは恐ろしい。この日はどうしてもリコンフォーム作業を終わらせたかった。 近くに電話ボックスが見当たらなかったので、またパールデュー駅に行って中の電話を使った。 HISからもらったアエロフロート事務局の連絡先番号をかけると、まず録音された案内が、ロシア語、フランス語、英語の順で全て流れる。はっきり言って、聞こえにくいし分かりにくい。昨日何度も試したので、ようやく自分が何番を押せばオペレーターにたどり着くかは分かった。昨日は、そのオペレーターがいくら電話しても出てくれなかったのだ。 オペレーターの番号は4番。それを押して暫くするとフランス語を話すオペレーターさんが出たので"English,
please."と言う。OKと言われたあと、1分近く英語を話すオペレーターさんは出てくれなった。 その後、2分間も返答がなかったのである。 音楽も流れない。その間に電話切れてしまったかと思ったし、どんなに切ってやろうかとも思ったが、このオペレーターさんにつながるまで、今まで10回以上試していたので、ここは辛抱強く待ってみることにした。2分後、ようやく、私が一番最初にイメージしていたような、出発日時とか、時間とか便名を聞いてくれた。…今だに、何でその作業するために2分間もの準備時間が必要だったのか疑問である。 帰ったら、友達が部屋で勉強していた。3時を過ぎていたが昼はまだ食べていないというので、私がモールで買った大き過ぎるパンを使った料理を作ってあげた。前日もパスタ作ったし、どうやら私は外国に行くと料理するようである。
それから疲れたので、部屋でだらだらしながら友達の写真の模写を始めてしまった。フランスにいるのだから、他にやることがありそうなものだが、その時の私はその模写がどうしてもしたかった。夜6、7時になってしまったので、この日の夜はレストランに行くことにした。 日本のフランス料理は高い。でも本場では安い。コースは1500円ぐらいだ。友達のお気に入りのレストランに連れて行ってもらった。その店のギャルソンの接客はあまりよくなかったが(普段はもっと感じのいいお兄さんがいるらしいが、その日はおじさんしかいなかった)、久しぶりだったし、クネルという私の好きな料理も食べられたので、大変満足した。 帰りは少し歩いて帰ることにした。リヨンの夜景は非常にきれいである。大学の建物は毎晩ライトアップされていて非常にきれいだ。デジカメで夜景を撮るのは非常に難しい。5秒ぐらいカメラを全く動かしてはいけないのである。でも普通はそんなことできない。押した瞬間にぶれるし、手だって普通は微妙にブルブル震えているものなのだ。だから何枚も何枚も夜景を撮って、とても寒い中長時間友達を待たせていたが、いい写真は本当にごく数枚だった。 |