ロ・ジャンは一瞬考え込み、はっと何かをひらめきました。
「そうだ、シリムス様にお聞きになる、というのはいかがでしょう?氏は、この国の生き字引であります」
リリネットは気難しい顔をして、少し考えごとをしました。

「シリムスねぇ…。確かに彼は色々な知識の持ち主だけれど…。この自転車をシリムスに見せるとなると、公になってしまう可能性も高い…それに彼は…」
リリネットはまたしばらく考え込み、そして口を開きました。
「確かにあなたの案は正しいかもしれないわ。結局私たちでは、この自転車や、この金属のことなんて、何一つ分析できないものね」
リリネットは、ロ・ジャンを呼んだ時とは別のロープを引っ張りました。すると、どこからともなく口笛のような音が鳴りました。 しばらくした後、ドアをノックする音が起こり、杖を持ったシリムスが部屋にゆっくりと入ってきました。シリムスは、リリネットが生まれた時からの執事です。いわばリリネットの世話係です。
「リリネットお嬢様、お呼びでしょうか」
「シリムス、あなたはこの赤い物体が何だかわかる?」
シリムスは赤い物体に近づき、その周りをぐるっと回りながらジロジロと観察しました。しかし…
「申し訳ございませんが、私は知りませぬ。しかしながら、これは恐らく近くの少年たちが、何かを改造してこしらえたものでしょう」
リリネットはその答えに対し冷たく返事をします。
「シリムスは本当にそうだと思ってるの?」

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