シリムスはセリネイと別れた後、自分の部屋に戻って彼との話を紙にまとめ、また再び外に出ました。シリムスが次に向かった場所は、リリネットの家の裏の、広大な森の一角にある大きな倉庫でした。

ここは、リリネット一族の歴代の資料や、使われていない家具、置物などが置かれているところなのですが、シリムスはロ・ジャンと力を合わせて、どうにか飛行機をここまで運んできたのです。この倉庫に入る人間は年に何人もいないので、絶好の隠し場所でした。 シリムスは製作所で着ている作業着に着替えて、倉庫の外から、シエラの乗ってきた飛行機を眺めました。右の翼がもげてはいますが、それ以外の部分はそこまで損傷がありません。青々とした綺麗なボディは、機械好きのシリムスの血を騒ぎ立てます。
「本当にそんなこと勝手にやっていいんじゃろうか…」
シリムスはぽつっとつぶやきながら、飛行機に近づき、飛行機のボディを軽くなでます。 「まぁ、どうせこのままじゃお前も空飛べんのだし、リリネット様が言うんじゃしなぁ…、わしはそれに従うまで…。」
寂しげな口調とは裏腹に、なぜかシリムスの目は生き生きと輝いています。
「生きている間にこんなことができるとは夢にまで思わんかったなぁ。わしが飛行機をいじれるなんて。おまけに、わしには空からの素晴らしい宝物まである。あのわがままお嬢様の下で働くのもまんざら悪くないかもな…」

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