リリネットは軽く微笑みながら続けます。
「あなたが密入国した理由なんて、私にとってはどうでもいいわ。最初は一瞬政府レベルのスパイかと思ったけど、この遅れてるロシエリナには、盗みたいほどの情報なんてないだろうし。多分個人的な理由でしょうね。

まぁ、飛行機で墜落してしまった上に、密入国もバレて、ちょっとやり方が下手だけどね」
リリネットのいやみには、シエラも苛立ちを隠せません。
「あんたガキのくせにうるさいわね!」
「随分偉そうね。この国で私のことをガキ呼ばわりする人間はそうはいないのよ。もう少し自分の状況と立場をわきまえて、ここは冷静に取り引きをしましょう」
シエラは自分より年下の娘になだめられたのが、また苛立たしかったのですが、確かに今の状況では明らかに自分が不利な立場に置かれていることを自覚しました。
「分かったわ。何か具体的な話でもあるの?」
「今のところそれほど細かいことは考えてないけど、あなたが私のカサランドラ探しに付き合ってくれたら、私はあなたがロシエリナに密入国したことは黙っていましょう。それにあなたの飛行機を直してあげましょう。右の翼がもげていたら、どっちみちあなたは、自分の国に帰れないでしょ?」
それを聞いてシエラは一瞬考えました。…カサランドラ探しなんてやるかどうかは後で決めればいいわ。まずはタダで飛行機を直してもらえるのは好都合。直してもらったら隙をついて逃げることもできるかもしれない…
「分かったわ。あなたの条件をのみましょう」
「ありがとう、シエラ。取り引き完了ね」

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