流石にシリムスもシラを切れなくなりました。前回リリネットにこの物体について問いただされた時の彼女の口調からいって、彼女がカサランドラの噂について何か知ってしまったことはシリムスも気付いていました。

その時彼女ははっきり言いませんでしたが、この物体がカサランドラから落ちてきたものだということをシリムスは知っているのではないかと勘ぐっていたのですから。シリムスは、このお嬢様には黙っているいるより、真実を言ってしまった方がいいと判断しました。 「分かりました。今現在私が知っていることをお教えしましょう」
「ありがとう」
「お嬢様がどこからそのことをお知りになったのかは分かりませんが、空に浮かぶ国、カサランドラの噂があることは事実です。しかしこの噂は、まだ一部の人間にしか広がっておりません。そしてこの物体がそこから落ちてきたかはどうかは、まだ私には何とも言えません。何しろ、まだ誰もカサランドラを発見し、実際にそこに足を踏み入れた者はいないからです。しかし、カサランドラが空に浮かんでいるのを目撃したと言っている者は何人もおります。ロシエリナ国は、お嬢様もご存知の通り、機械の技術は他国に大幅に遅れを取っております。この国では、昨日私が見せた車さえもまだ稀な存在ですが、他国では最近「飛行機」という、空飛ぶ機械の開発が盛んでございます。その「飛行機」という物体に乗った者が、空に浮かぶ陸、つまりカサランドラを見たというのです。カサランドラという名は、どうやら昔の言い伝えから取った名前のようです」

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