ドアをノックすると、若い男が中から出てきました。
「よう、かわいいお嬢ちゃんだね、こんな製作所に何の用だい?」
するとリリネットは、ニコニコと何かを答えています。

ロ・ジャンは、リリネットが誰だか気付かずに軽々しい口調で話しかけるこの男に一瞬苛立ちを覚えましたが、自分はあまり状況が分かっていないので、とりあえず様子を見ることにしました。
リリネットから何かを言われた若い男は、いったん建物の中に入っていきました。
若い男が騒々しい製作所の中で叫びます。
「シリムス爺さん、お孫さんのリリィが訪ねてきたよ!」
奥から、少し聞き覚えのある声が返ってきます。
「バッカヤロー、オレの孫はジャネットだよ、リリィなんて勝手な名前付けんな!」
その声の主はどう考えても、リリネットの執事のシリムスでした。製作所にいる他の男達と同じボロくさい作業着を着て、何か金属を加工していたようです。
シリムスが、作業を中断して、ドアの方を振り向くと、リリネットがニコニコして立っていました。
「んはっ!リリネット様??!」
シリムスはこの場所をリリネットどころか、リリネットの豪邸に勤める誰一人に話したことがなかったので、リリネットの突然の訪問に目が点になり、時が止まってしまいました。 「シリムスおじいちゃん、遊びに来たわよ!」
リリネットはとても自慢げにシリムスに話かけました。

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